呪われた休日に解き放たれた恋

「明日も明後日も、何も変わらないんだろ」アキラは吐き捨てるように呟く。ユキは俯いたまま、「アキラ様のお傍にいられるだけで…」と消え入りそうな声で答える。生まれながらに「奴隷」として生きる運命、そして「奉仕義務」という名の鎖。アキラの胸を締め付ける息苦しさは、ユキの健気な忠誠心すらも重く感じさせていた。

年に一度の「休日」。アキラは、学園都市の禁断区域、呪物の展示室へ忍び込んだ。魂を蝕むという曰くつきの品々。その中央に鎮座する、古びた懐中時計。アキラは、ユキに問いかける。「もし、この呪いが解けて自由になれたら…君はどうしたい?」

「アキラ様と一緒に、ただ、どこか遠くへ…」ユキの声は震えていた。アキラは、懐中時計に手を伸ばす。それは「休日に限り、主従の絆を一時的に断ち切る」呪物。指先が触れた瞬間、鈍い光が時計を包み、微かな金属音が響く。「この休日だけだ。僕を『アキラ様』なんて呼ぶな。君の本当の気持ちを、聞かせてくれ」アキラは、ユキの目をまっすぐに見つめて迫った。

呪物の効果が発動した。主従の壁が消え、ユキの堰き止めていた感情が溢れ出す。「アキラ様…!私、ずっと…ずっとアキラ様のことが好きでした!」涙で濡れた頬、震える唇。アキラは、その純粋な告白に言葉を失う。ユキの熱い想いが、アキラの凍てついた心を溶かしていく。初めて触れる、本当の温もり。しかし、休日の終わりを告げる鐘の音が、静かに響き始めていた。

呪物の効果が消える寸前、アキラはユキの手を強く握りしめた。「ありがとう」。短い言葉に、感謝と、そして決意が込められていた。ユキは、涙を拭い、微笑む。再び主従に戻る二人。だが、あの休日の輝きは、二人の心に確かに刻まれていた。アキラは、ユキの手を、未来への誓いを込めて、もう一度、強く握り返した。切なくも、希望を灯すように。

束縛からの解放と、刹那的ながらも強烈な愛の体験が、登場人物たちの心に深い余韻を残す。未来への希望と、失われた時間への切なさが入り混じる、切なくも劇的な読後感。

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