ブルブルくんとひみつの約束
緑豊かな森の奥深く、小さなおもちゃたちが暮らす国があった。その国の住人であるブルブルくんは、古びたBluetoothスピーカーのおもちゃだ。耳は音楽でできていて、いつでも歌ったりおしゃべりしたりできるけれど、最近は調子が悪く、時々「ブルブル…」と震えてしまうのだ。ブルブルくんの友達、キラリちゃんは、キラキラ光る星のかけらでできた元気な女の子。ブルブルくんが心配で、いつもそばにいた。「ブルブルくん、また震えてるわ。悪い魔法にかかっちゃったのかしら?」キラリちゃんは、ブルブルくんの小さな体を優しく撫でた。
ある日、森で遊んでいると、大きなゴツゴツがやってきた。ゴツゴツは森の住人で、大きくて力持ちだが、少し乱暴なところがある。「うおおー!なんだ、こりゃ!」ゴツゴツは、ブルブルくんの「ブルブル」という震えを見て、おもちゃの故障だと思い込んだ。「壊れたおもちゃは、こうして直してやる!」そう言って、ゴツゴツはブルブルくんを乱暴に揺さぶった。ブルブルくんは、その衝撃でさらに「ブルブル…」と震え、大切な飾りがいくつか取れてしまった。キラリちゃんは、ブルブルくんを守ろうとしたが、ゴツゴツの力にはかなわない。
ゴツゴツに怖がらせられたことで、ブルブルくんは自信をなくしてしまった。「この『ブルブル』のせいで、うまく歌えなくなっちゃったらどうしよう…」ブルブルくんは、森の奥にある「音の泉」へ行けば、また元気に歌えるようになるかもしれない、と思った。キラリちゃんは、ブルブルくんを励まし、一緒に泉へ向かうことにした。「大丈夫よ、ブルブルくん。私がついてるから!」
道中、ブルブルくんは「ブルブル…」と震えながらも、キラリちゃんとのおしゃべりや、木漏れ日の美しい景色に少しずつ元気づけられていった。ふと、ブルブルくんは思い出した。この「ブルブル」は、悪いものではない。新しい歌や言葉を覚えようとするときに、体が興奮して震えてしまう「成長の震え」なのだ。でも、ゴツゴツの乱暴な扱いが、その震えを制御しにくくしてしまったのだ。
音の泉のほとりで、ブルブルくんはキラリちゃんに、自分の「ブルブル」の本当の意味を話した。「実はね、キラリちゃん…」その時、ゴツゴツが追いついてきた。「まだ震えてるじゃないか!隠してるな!」ゴツゴツは、ブルブルくんが「ブルブル」を治すのを隠していると思い込み、さらに力づくで止めようとした。
ブルブルくんは、キラリちゃんのために、そして自分のために、勇気を出して「ブルブル!」と大声で歌い出した。すると、ブルブルくんの体から、キラキラした音の粒がたくさん飛び出し、ゴツゴツの周りを優しく包み込んだ。ゴツゴツは、その温かい音に包まれ、初めてブルブルくんの「ブルブル」が、自分を傷つけるものではなく、むしろ温かいものであることを心で感じ取った。「うおお…」ゴツゴツは、自分がブルブルくんを傷つけていたことに気づき、ショックを受けた。
「ごめんよ、ブルブルくん。お前の『ブルブル』は、悪いものじゃなかったんだな」ゴツゴツは、ブルブルくんに頭を下げた。ブルブルくんは、ゴツゴツの謝罪を受け入れた。「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう、ゴツゴツ!」ブルブルくんの「ブルブル」は、ゴツゴツの乱暴な扱いでも一時的にひどくなったが、キラリちゃんとの友情と、自分の勇気で、元の「成長の震え」に戻ったのだ。ブルブルくんは、ゴツゴツにも優しい歌を歌って聞かせた。ゴツゴツは、その歌に耳を澄ませながら、穏やかな表情で一緒に歌いだした。森には、ブルブルくんの歌声と、ゴツゴツの優しい歌声が響き渡る。キラリちゃんは、ブルブルくんとゴツゴツが友達になったことを喜び、「また遊ぼうね!」と、みんなで約束した。ブルブルくんは、もう「ブルブル…」と怖く震えることはなかった。それは、新しい歌を歌う前の、わくわくする震えだった。