ケーキ潜水艦、出発!

海辺の小さな町に住むコウタは、ずっと夢見ていた「ケーキ潜水艦」を作ることにした。それは、甘いクリームとふわふわのスポンジでできた、海を冒険するための特別な潜水艦だ。窓はキラキラの飴玉で、プロペラはカラフルなクッキーでできている。材料集めをしていると、裏庭で不思議な生き物「ポポ」と出会った。ポポは、コウタが持ってきた大きなイチゴに興味津々で、コウタの作るケーキ潜水艦に目を輝かせ、一緒に手伝ってくれるようになった。コウタは、スポンジの壁がうまく固まらないことに少ししょんぼりしていたが、ポポがキラキラの泡をプクプクと吹きかけると、あら不思議!壁がみるみるうちに固まっていく。「わぁ!すごいよ、ポポ!」コウタのわくわくは、もう止まらない。

ケーキ潜水艦は完成に近づいた。船体はチョコレートでコーティングされ、マストには綿あめが飾られている。しかし、コウタは「本当に海に潜れるのかな…?」と不安になってきた。そんな時、町のお祭りで「ケーキ早食い競争」が開かれることを知った。優勝者には、町で一番大きな「特製フルーツケーキ」がもらえるという。コウタはお母さんに相談した。「お母さん、あの特製ケーキをケーキ潜水艦の動力源にできないかな?」お母さんは優しく微笑んだ。「いい考えね、コウタ。でも、早食い競争には、町で一番足の速いアキラくんが出場するって噂よ」コウタはますます自信をなくしてしまった。「アキラくん、すごいんだ。パクパク!って、あっという間に食べちゃうんだ…」

早食い競争当日。コウタはポポを連れて会場へ向かった。会場はたくさんの人で賑わっている。いよいよアキラくんの番だ。彼は「ムシャムシャ!ガツガツ!」と、本当に驚くほどの速さでケーキを食べていく。コウタは「ドキドキ…」と心臓が早鐘を打つのを感じた。隣でポポが「ピピ!」と応援してくれる。その鳴き声は、まるで甘い魔法のようだった。コウタの体に力がみなぎってくるのを感じた。「よし!僕もがんばるぞ!」コウタは、今までで一番速くケーキを食べ始めた。一口、また一口。ポポの応援を力に、コウタは驚くべきスピードでケーキを平らげていった。そして、奇跡的に優勝!特製フルーツケーキを手に入れたコウタは、早速ケーキ潜水艦のエンジンルームに飾り付け、海へ向かった。ケーキ潜水艦は、甘い香りを海風に乗せて漂わせながら、見事に海へと潜っていく。「わー!ふわ〜ん、いい香り!潜れた!」

ケーキ潜水艦は、キラキラのお魚さんがクリームの雲の間をすいすい〜と泳ぎ、カラフルなサンゴがキャンディみたいに広がる、見たこともない美しい海中を冒険していた。コウタはポポと一緒に、感動で胸がいっぱいになった。「すごい!本当に潜れたんだ!」コウタの顔は、満面の笑顔でいっぱいだ。遠くの海辺から、お母さんがその様子を優しく見守り、微笑んでいる。ケーキ潜水艦は、冒険を終え、夕日に照らされた町へとゆっくりと帰っていく。コウタは、勇気を出して挑戦すれば、夢はきっと叶うことを知った。ポポも嬉しそうに、コウタの肩で満足げに眠っている。「また、一緒に冒険しようね、ポポ!」コウタは、次にどんな冒険ができるか、胸をときめかせながら、静かに波の音を聞いていた。

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