キラキラ森の、ちいさな剣士さま
キラキラ森の、ちいさなリスのピコは、いつも目をまんまるくして、お仕事小屋をのぞいていました。そこでは、森の長老、ゴンじいが、ニコニコしながら、新しい「キラキラ光る木の実拾い用のカゴ」を作っていたのです。トントン、カチカチ、ピコピコ。ゴンじいの作る道具は、どれもこれも、キラキラ森のみんなの宝物でした。
「へぇ、すごいなぁ。僕も、早く大きくなって、みんなの役に立つお仕事したいなぁ」
ピコが、キラキラした目でつぶやいていると、ぴょこんと、元気な声がしました。
「ふふん、ピコったら、まだちっちゃいのに、そんなこと言ってるの? あたし、クルン! ハリネズミのクルンよ! あたしの方が、ぜーったい、先に一番上手にカゴを作るんだから!」
クルンは、ピコのライバル。ちょっぴり生意気なハリネズミの女の子です。
ゴンじいは、そんな二人を見て、優しく微笑みました。
「おお、ピコ、クルン。二人とも、お仕事に興味があるんじゃな。よし、今日は二人にお仕事をあげよう」
ゴンじいは、ピコとクルンに、それぞれ「キラキラした葉っぱを集める」という、ちょっぴり簡単なお仕事を任せました。
ピコは、一生懸命、葉っぱを拾い集めました。「これは、お日さまの光をいっぱい浴びて、キラキラしてるぞ!」ピコは、一番きれいな葉っぱを、そーっと、そーっと集めます。
一方、クルンは、ピョンピョン跳ねながら、あっという間にたくさんの葉っぱを集めてしまいました。「あたしの方が、たくさん集めたわ!」クルンは、得意げな顔です。
ピコは、クルンの集めた葉っぱの量を見て、ちょっとだけしょんぼりしました。「クルンの方が、速いんだなぁ…」
でも、ゴンじいは、ピコの集めた葉っぱを手に取って、ニコニコしました。
「おお、ピコ。お前さんの集めた葉っぱは、とても丁寧じゃ。キラキラの輝きが、ひとつひとつ、ちゃんと残っておる。素晴らしいぞ」
ピコは、ゴンじいの言葉に、胸がポカポカしました。速さだけが、大切じゃないんだ。そう思ったら、なんだか、もっと頑張りたくなりました。
次の日、ゴンじいは、ピコとクルンに、もっと難しいお仕事を任せました。それは、「森の入り口にかかった、ちょっぴり危ない細い橋を、安全な草で補強する」というものでした。
「さあ、二人で力を合わせて、やってごらん」
ピコは、ゴンじいがいつも使っている、「キラキラの剣」のような、丈夫な枝を見つけました。それで、草を束ねようとしますが、なかなかうまくいきません。「むむむ、なんでだろう?」
クルンも、自分の鋭い針で、草を「チクチク」と刺して、橋に固定しようとしました。でも、あらら、草がバラバラになっちゃった!
「まったくもう! うまくいかないじゃない!」
二人は、お互いのやり方がうまくいかないことに、ちょっぴり困ってしまいました。
その時、ピコは、ゴンじいが「キラキラの剣」で、草を「ちょきん、ちょきん」と切って、細かく束ねていたのを思い出しました。
「そうだ! ゴンじいは、細かく切ってたんだ!」
ピコは、自分の「キラキラの剣」で、クルンが持ってきた丈夫な草を、ゴンじいのように、細かく切ってみました。すると、どうでしょう! とても丈夫で、きれいな束ができました。
クルンは、ピコが作った束を見て、目をキラキラさせました。「わあ、すごい! その束、あたしの針で、橋にしっかり固定できるわ!」
クルンは、自分の針で、ピコが作った草の束を、橋に「チクチク、ぐいぐい」と、しっかりと固定していきました。ピコは、また新しい草の束を作って、クルンに渡します。二人は、まるで踊っているみたいに、息ぴったり。
「ちょきん、ちょきん」「チクチク、ぐいぐい」
協力して、あっという間に、橋は安全に、ピカピカに補強されました。
ゴンじいは、二人の頑張りを見て、満面の笑みを浮かべました。
「二人とも、よく頑張ったのう。お互いの良いところを活かせば、どんなお仕事も、もっと楽しく、もっと上手にできるのじゃ。素晴らしい、素晴らしいぞ」
ピコとクルンは、顔を見合わせて、「やったね!」と、元気いっぱいにハイタッチしました。
「あたし、ピコと一緒だと、お仕事楽しいや!」
クルンが、ちょっぴり照れくさそうに言うと、ピコも、満面の笑顔で答えました。
「うん、僕もだよ! クルン、ありがとう!」
クルンは、ピコの肩をポンと叩きました。「次は、もっとすごいカゴ、一緒に作ろうね!」
二人は、キラキラ森の、新しい「お仕事仲間」になったのです。
夜になり、ピコは、今日のお仕事のことを思い出しながら、ふわふわのお布団に潜り込みました。お仕事小屋の明かりが、遠くで優しく灯っています。森は、みんなの「お仕事」のおかげで、今日もキラキラと輝いています。
「世界は、なんて、素晴らしい場所なんだろう…」
ピコは、そんな温かい気持ちを胸に、ぐっすりと眠りにつきました。夢の中では、きっと、キラキラの木の実をたくさん拾っていることでしょう。