秘密基地の銀河インタビュー!〜未知との遭遇は突然に〜
「うおっしゃあ! これぞ夏! これぞ冒険の匂いだぜ!」
僕、カケルは叫んだ。額から汗がダラダラ流れて、Tシャツが背中にべっとりと張り付く。でも、そんなの気にしてる場合じゃない。 ここは僕らの秘密基地。町外れの廃工場だ。錆びついた鉄の匂いと、濃い夕焼けのオレンジ色が混ざり合って、なんだか胸がザワザワする。
「ちょっと、カケルくん! 声がでかいよ。データ整理の邪魔しないでくれ」
ドラム缶の上でノートパソコンを広げているのは、相棒のハカセだ。メガネをクイッと押し上げながら、ブツブツ言ってる。こいつはいつも冷静ぶってるけど、この秘密基地を見つけた時、一番目を輝かせてたのはハカセなんだぜ。
「なんだよハカセ、もっと熱くなれよ! この夏休み、何かデッカイことが起きる予感が……」
その時だった。
ピカッッッ!!
空が割れたかと思うくらいの、強烈な光! 目が眩む!
ズドドドォォォーーーン!!
「うわああっ!?」 「ひっ、ひいいっ!?」
鼓膜が破れそうな爆音! 地面がトランポリンみたいに大きく跳ねた! 裏庭から土煙がモクモクと立ち上り、視界が真っ白になる。
「ゲホッ、ゴホッ! な、なんだ今の!?」 「震源地は裏庭だ! 計算上、隕石クラスの衝撃だよカケルくん!」
僕らは顔を見合わせ、同時に走り出した。心臓がバクバクと早鐘を打つ。怖い? いや、それ以上に体が勝手に動くんだ!
裏庭に辿り着いた僕らは、息を呑んだ。
「す、すげぇ……」
地面が大きくえぐれ、クレーターができている。その中心に埋まっていたのは、銀色にギラギラと輝く、真ん丸な球体だった。 まるでSF映画から飛び出してきたみたいな、正体不明の『何か』だ!
「こ、これは未知の金属だ……! 世紀の大発見だよ!」
ハカセが興奮して、持っていたスパナでその球体をコンコン、と叩いた。
その瞬間だ。
ギュイイィィィン!
「うおっ!?」
球体の一部がスライドし、巨大な一つ目のレンズが現れた! まるで生き物みたいにギョロリと動き、僕らを睨みつける。
ピピピッ! ロックオン!
赤いレーザー光線が僕とハカセの胸元に突き刺さる。
「ヤバい、ハカセ逃げろッ! ダッシュだ!!」 「わ、わかってるよぉ!」
僕らは踵を返して走り出そうとした。だけど――
ブォンッ!!
「痛っ!?」
見えない壁だ! 空気がカチカチに固まったみたいに、僕らを弾き返した。バリア!?
「閉じ込められた……!? こ、このエネルギー反応、異常数値だ!」
ハカセが真っ青な顔で叫ぶ。 その時、球体――探査機から、シュバッ! と何本ものアームが飛び出した。先端にはドリル……じゃなくて、マイク?
『ガガ……ピピ……地球人ニ告グ』
機械的な音声が脳みそに直接響いてくるみたいだ。
『コレヨリ、銀河標準テスト「インタビュー」ヲ開始スル』
「イ、インタビューだと!?」
『肯定。コノ質問ニ、正シク答エラレナカッタ場合……』
ウィィィン……カシャッ!
探査機の横から、どう見てもヤバそうな砲身が飛び出し、不気味な光を溜め始めた。
『コノ区画ヲ、消去スル』
「し、消去って……爆破する気かよ!?」
膝がガクガク震えだした。マジかよ。夢なら覚めてくれ! お化け屋敷だってリタイアしたことのある僕に、こんな宇宙規模のピンチ、耐えられるわけないだろ!
『質問、開始。……オマエタチノ、サイダイノ「弱点」ハ何ダ?』
「え……?」
『弱点ヲ申告セヨ。制限時間ハ、10秒』
10、9、8……。
無慈悲なカウントダウンが始まる。 弱点? そんなのありすぎてわかんねーよ! 勉強も苦手だし、ピーマンも食えないし、夜のトイレだって一人じゃ行けない!
「ど、どうしようカケルくん! 生物学的な弱点? それとも文明レベルの話かな!? 答えを間違えたらドカンだよぉ!」
ハカセが頭を抱えて座り込む。その震える背中を見た時、僕の中で何かが弾けた。
ドクンッ!!
怖い。めちゃくちゃ怖い。足なんて生まれたての子鹿みたいにプルプルしてる。 でも、隣にいるハカセはもっと怖がってる。
(俺が……俺がやらなきゃ、誰がやるんだよ!!)
恐怖で凍りついた喉を、無理やりこじ開ける。腹の底から、熱いマグマみたいな感情が湧き上がってくる!
「3、2、1……」
「うおおおおおッ!! 俺たちの弱点はなぁッ!!」
僕はマイクに向かって、ありったけの声で吠えた!
「『恐怖心』だッ!! ビビりでお化けも怖いし、今だってチビりそうなくらい怖い!!」
『判定……解析中』
「だけどな!!」
僕は震える手で、ハカセの手をガシッと掴んで立ち上がらせた。
「ビビってるからこそ! 俺たちはこうやって手を繋げるんだ! 一人じゃ無理でも、友達と一緒に震えれば、勇気に変わるんだよッ!! 怖いからこそ、強くなれるんだよぉぉぉッ!!」
ゼェゼェ……。 叫びすぎて、喉が焼けるように熱い。 探査機のレンズが、ジッと僕らを見つめている。沈黙が痛い。
ピピ……。
赤い光が、スゥッと青色に変わった。
『回答、承認。……地球人ハ、有望ナリ』
シュンッ!
僕らを囲んでいたバリアが消滅した。
「た、助かった……のか?」
ハカセがへたり込む。 探査機はポンッ! と小さなカプセルを吐き出した。
『コノ先ニ、我ガ同胞ガ眠ル。……健闘ヲ祈ル』
キィィィィン!!
探査機は強烈な風を巻き起こし、あっという間に夕焼けの空へ飛び去っていった。 後に残されたのは、僕らと、小さなカプセルだけ。
「い、行っちゃった……」 「カケルくん、これ……!」
ハカセがカプセルを開くと、中から光の粒子がフワァッと溢れ出した。ホログラムだ! 空中に浮かび上がったのは、見たこともない地図。
「ここ……隣町の山の頂上だぜ!」
僕の足は、もう震えていなかった。 さっきまでの恐怖が、嘘みたいにワクワクに変わってる。
「へへっ、ハカセ。夏休みはまだ始まったばかりだぜ! 宇宙人の『同胞』ってやつ、探しに行こうぜ!」
僕がニカッと笑うと、ハカセもメガネを直しながら不敵に笑い返した。
「まったく、カケルくんには敵わないな。……もしかして、次はUFOの発掘かい!?」
「決まってんだろ! 行くぞォッ!!」
僕らは自転車に飛び乗った。 キキーッ! とタイヤを鳴らし、ペダルを全力で踏み込む。 風が気持ちいい。心臓が高鳴る。
夕暮れの坂道を、僕らは猛スピードで駆け抜けていく。 さあ、地図が指し示す場所へ。 僕らのとびっきりの冒険は、ここからが本番だ!