激走!校長室ダンジョンと伝説の神器

『キーンコーンカーンコーン!』

放課後のチャイムが鳴り響いた瞬間、ボクらの世界は一変する。 それはただの授業終わりの合図じゃない。冒険の始まりを告げる、運命のゴングだ!

「行くぜ、ハカセ! 今日こそあの『理不尽な校則』から独立する時だ!」

ボク、カケルは机を『バンッ』と叩いて立ち上がった。膝小僧の絆創膏が、疼くように熱くなる。

「待ってよカケルくん。計算によると、今の廊下の危険度はマックスだよ」

丸眼鏡を『クイッ』と押し上げながら、ハカセがランドセルから怪しげなメーターを取り出した。こいつはボクの最高の相棒だ。ちょっとビビりだけど、頭の中には宇宙図書館が丸ごと入ってる。

「危険? 上等だろ! ビビってる暇なんてねーぞ!」

ボクらは教室を飛び出した。 目指すは、この小学校という名の巨大要塞の最深部――『校長室』だ!

廊下に出た瞬間、ボクは息を呑んだ。

「うおっ! なんだこれは!」

そこには、窓から差し込む夕日を反射して、『テラテラ』と不気味に光る床が広がっていた。

「やっぱりだ……。今日はワックスがけの日だったんだよ! 見て、この摩擦係数の低さ。これはもはや廊下じゃない、灼熱のマグマの海だ!」

ハカセが悲鳴を上げる。 だが、ボクの足は止まらない。

「関係ねえ! マグマだろうがなんだろうが、駆け抜けるだけだッ! ダッシュだあああ!」

『キュキュッ、バタバタバタ!』

上履きのゴムを軋ませ、ボクは光る床を蹴り飛ばす! 滑る! めちゃくちゃ滑る! まるで氷の上を走っているみたいだ。体幹が『グラグラ』揺れるけど、勢いでねじ伏せる!

「ひえええ! 待ってよぉ!」

ハカセも『チョコチョコ』と必死についてくる。 その時だ。

『ピピピッ!』

ハカセの持っていた『先生探知レーダー(自作)』がけたたましい警報音を鳴らした。

「カケルくん! 3時の方向! 職員室の扉が開く確率は120%!」

「なにっ!?」

前方にある職員室。その曇りガラスの向こうで、巨大な影が動く。あれは……生活指導の鬼、田中先生だ! あの視線に見つかったら即アウト。補習という名の牢獄行きだ。

「止まれない! このまま突っ切るぞ!」 「無理だよ! 慣性の法則を無視しないで!」 「うるせえ! 必殺、スーパー・スライディング・ダッシュ!」

ボクは勢いよく床に飛び込んだ。 ワックスの滑りを利用して、体ごと『ズサーーーッ』と滑走する!

『ガララ……』

職員室の扉が開く音。 ボクとハカセは、扉の下の死角を、弾丸のように滑り抜けた。

「こらー! 廊下を走るなー!」

背後で怒号が聞こえた気がするけど、もう遅い。 心臓が『ドクン、ドクン』と早鐘のように鳴り響く。ギリギリの命拾いだぜ!

「はあ、はあ……生きた心地がしなかったよ……」 「へへっ、スリル満点じゃねーか!」

そして、ボクらはついに辿り着いた。 廊下の突き当たり。重厚な木の扉。 『校長室』というプレートが、まるで魔王の城の看板みたいに威圧感を放っている。

「ここか……」

『ゴクリ』と唾を飲み込む。 この奥に、ボクらの自由の証となる『伝説の神器』があるらしい。

「突入!」

『ギィィィ……』

扉を開けると、そこは別世界だった。 深煎りのコーヒーの香りが『フワッ』と漂い、静寂が支配している。 壁一面の本棚。ふかふかのソファ。 そして、部屋の中央に鎮座する巨大なマホガニーの机。

「あった……! あれだ!」

机の上に、夕日を浴びて『ピカーン』と黄金に輝く物体があった。 ボクはおそるおそる近づく。 それは……。

「……え? けん玉?」

そう、それはただの、金色のけん玉だった。

「なんだこれ? これが神器?」

ボクが拍子抜けして手を伸ばそうとした、その瞬間!

『クルリ』

机の向こうを向いていた革張りの椅子が、ゆっくりと回転した。

「フォッフォッフォ。よくぞここまで辿り着いたな、若き冒険者たちよ」

そこには、白い髭を蓄えた老紳士――グレート・プリンシパル(校長先生)が座っていた! 眼鏡の奥の瞳が『キラリ』と光る。

「こ、校長先生!?」 「いかにも。そしてそのけん玉こそ、かつて私がアマゾンの奥地で『人食いジャガー』の大群から逃れるために編み出した、最強の護身具なのだ!」

「人食いジャガー!?」

ハカセが『ガタガタ』震えだした。 校長先生はニヤリと笑い、立ち上がる。

「この神器『ゴールデン・スパイク』は、真の勇気を持つ者にしか扱えん。使いこなせぬ者に、自由を語る資格なし! さあ、見せてみろ! お前の魂の色を!」

「上等だぜ!」

ボクは金色のけん玉を『ガシッ』と掴んだ。 ずしりと重い。これが……冒険の重みか!

「一発勝負だ。大技『世界一周』を決めてみせる!」

ボクは足を広げ、腰を落とす。 部屋の空気が『ビリビリ』と張り詰める。 ハカセが息を呑む音が聞こえる。 校長先生の鋭い視線が突き刺さる。

集中しろ……。 考えるな、感じろ!

「うおおおおお!」

ボクは叫びと共に、玉を引き上げた!

『ヒュン!』

空気を切り裂く音。 玉は赤い残像を残して宙を舞う。 まずは大皿!

『カチッ!』

乗った! 膝のクッションを使って衝撃を殺す。 次は小皿!

『ヒュッ、カチッ!』

完璧だ! リズムに乗ってきた! 心臓の鼓動と、玉の動きがシンクロする。 最後は……けん先だ! ここが一番難しい。数ミリのズレも許されない。

玉が頂点で一瞬、静止する。 世界がスローモーションになる。 玉の穴が、ボクを呼んでいる!

「そこだッ!」

『スッ……』

『ピシッ!!!』

乾いた音が、校長室に響き渡った。 金色の玉は、見事にけん先に突き刺さっていた。

「やったぁぁぁ!!」 「すごいよカケルくん! 計算を超えた奇跡だ!」

ハカセが飛び跳ねる。 ボクは肩で息をしながら、校長先生を見た。

「……見事だ」

校長先生は満足げに頷くと、机の引き出しを開けた。

「合格だ、少年。その神器はお前に託そう。そして……これを持っていくがいい」

『パサッ』

手渡されたのは、一枚の古ぼけた紙切れだった。 それは、学校の裏山の地図? いや、ただの地図じゃない。

「こ、これは……!」

ハカセが地図を覗き込み、目を見開く。 そこには赤いバツ印と共に、謎の言葉が書き殴られていた。

『空飛ぶクジラの寝床』

「空飛ぶクジラだって!?」

ボクの声が裏返る。

「この学校の地下には、古代の遺跡が眠っているという噂があるが……まさか裏山に繋がっていたとはな」

校長先生は意味深にウインクをした。

「行け、若人よ! 世界は教科書よりもずっと広くて、面白いぞ!」

「ありがとうございます! 校長先生……いや、グレート・プリンシパル!」

ボクらは校長室を飛び出した。 『神器』を手に入れたボクらの目の前には、今、新たな地図がある。

「ハカセ! あの山の向こうには、誰も見たことのない『空飛ぶクジラ』が眠ってるんだ!」 「クジラが空を飛ぶなんて科学的にはありえない……でも、カケルくんと一緒なら、見つかる気がするよ!」

窓の外は、燃えるような夕焼け。 ボクらはその光に向かって、『ダダダッ』と全力疾走する。

校長室の攻略なんて、ほんの序章に過ぎなかったんだ。 さあ、次はどんな冒険が待っているんだろう?

「行くぞハカセ! 世界の謎を暴きに! 全速前進だあああ!」

ボクらの冒険は、まだまだ終わらないんだ!

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