ぷかぷか、きらきら、ぼくのプール

夏の日差しが、おひさまのほっぺみたいに、ぽかぽかと、ゆうきくんの窓をたたきました。 「ゆうきー、プールに行く時間だよー!」 おかあさんの、やさしい声が聞こえます。 ゆうきくんは、にこにこしながら、水着に着替えました。 でも、テレビから、なんだかこわいお話が聞こえてきたのです。 「大きな、大きな海の生き物が、ぷかぷか浮いている人を、びっくりさせちゃうんですって!」 テレビのお兄さんの、ちょっと早口で、しんけんな声。 ゆうきくんの、ちっちゃな心は、なんだか、ざわざわ、ざわざわ。 プールって、ひろーいところ。 底が、どこまでも、みえないところ。 ゆうきくんは、ちょっぴり、こわくなってしまいました。

プールに着くと、おひさまの光が、水面で、きらきら、きらきら、おどっていました。 まるで、たくさんの、ダイヤモンドみたい。 でも、ゆうきくんの心は、テレビで聞いた、こわいお話のせいで、なんだか、どんより、どんより。

プールの中では、お友達が、ぷかぷか、ぷかぷか、上手に浮いています。 「わー!すごいね!」 ゆうきくんは、心の中で、そっとつぶやきました。 「ぼく、ちゃんと、ぷかぷか、できるかな…」 また、こわい気持ちが、むくむく、むくむく。

そのとき、お友達が、水の中で、くるりん、ぱ! 楽しそうに、手を振ってくれました。 ゆうきくんは、なんだか、うらやましくなりました。 「あんな風に、ぷかぷか、なれたら、いいな…」

ゆうきくんは、えいっ!と、そっと、プールに足を入れてみました。 ひんやり、つめたーい! 「わぁ!つめたーい!」 思わず、声が出ちゃいました。

すると、どうでしょう。 水の中から、キラキラ、キラキラ、きれいな泡が、ぷくぷく、ぷくぷく、上がってきたのです。 それは、プールの妖精、「ぷーちゃん」でした。 ぷーちゃんは、水みたいに、キラキラ、キラキラ、輝いて、ゆうきくんを、やさしく、見つめていました。

ぷーちゃんは、言葉を話しません。 でも、水の揺らぎと、優しい光で、ゆうきくんの、こわい気持ちを、ふわふわ、ふわふわ、包み込んでくれるのです。 ゆうきくんは、ぷーちゃんと一緒に、水の中で、くるくる、回ったり、泡で、お花の絵を、描いたりして遊びました。

ぷく、ぷく、ぷく。 「こんにちは!」

いつの間にか、ゆうきくんの心は、ざわざわ、していました。 こわい気持ちは、どこへ行ったのでしょう。 ぷーちゃんが、ゆうきくんの不安な気持ちを、ぜーんぶ、吸い取ってくれたみたい。

ぷーちゃんに、そーっと、導かれるように、ゆうきくんは、水の中を、ゆらゆら、ゆらゆら。 水面を叩く音は、「ぱしゃん、ぱしゃん」。 水の中は、「しー…」。 とっても、静かで、心地よい音。

ぷーちゃんが、ゆうきくんの周りを、キラキラ、踊るように、泳ぎます。 テレビで見た、こわいお話は、もう、遠い遠い、昔のことみたい。 水の中は、とっても、安全で、優しくて、楽しい場所なんだ。 ゆうきくんは、そう、確信しました。

ゆうきくんは、ぷーちゃんと一緒に、水の中を、「ぷかぷか」「ゆらゆら」。 顔を水につけても、なんだか、怖くない。 むしろ、水の中の、キラキラした世界が、ゆうきくんの心を、優しく、撫でてくれるようでした。

プールから、上がる時間。 ゆうきくんは、ぷーちゃんに、大きく、手を振りました。 「また、来るね!ぷーちゃん!」

お家へ帰る道。 ゆうきくんは、道端に咲く、小さな花が、おひさまの光を浴びて、「きらきら」しているのを見つけました。 鳥の「ちゅんちゅん」という、さえずりも、なんだか、優しく聞こえます。

さっきまで感じていた、あの「優しさ」と「キラキラ」が、あちこちに、いっぱいある。 「世界は、こんなにも、優しくて、キラキラしているんだ!」 ゆうきくんの心は、温かい光で、いっぱいになりました。

夜。 ゆうきくんは、安心した気持ちで、ベッドに潜り込みました。 お布団は、ふかふか。 まぶたは、とろん。

明日は、どんな、楽しいことがあるかな? ゆうきくんは、にこにこしながら、ぐっすり、眠りにつきました。

おやすみなさい。 また、明日、あえるね。

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