キラキラ湖のひみつの約束

ぴょんぴょん、ぴょんぴょん。春の陽射しが、キラキラ湖の水をまぶしく照らしています。綿毛みたいな雲が、ふわふわと空を流れていく。そんな日、うさぎのピョンは、新しい冒険に胸をときめかせていました。「わぁ、今日はなんだか、わくわくするなぁ!」

ピョンは、ぴょんぴょん、ぴょんぴょん、元気いっぱいに湖のほとりを駆け回ります。色とりどりの花が、にこにこ笑っているみたい。タンポポが、ふわふわの綿毛を風に乗せて、どこまでも飛んでいく。「どこへ行くのかな?」「僕も、ぴょんって、飛んでみたいな!」

そんなことを考えていたら、ピョンの目に、キラキラ、キラキラ、まぶしい光が飛び込んできました。「あれ?なんだろう?」「なんだか、きれいな光…」

そーっと、そーっと近づいてみると、それは、水のなかを、スイスイ、スイスイと泳いでいました。体が、太陽の光を浴びて、虹色にキラキラ光っています。ピョンは、見たことのない生き物でした。ピョンの知っている、もふもふの毛や、ぴょんぴょん跳ねる足はありません。なんだか、ひらひら、ひらひら、きれいなヒレみたいなものが見えます。「わぁ…」「なんだか、ちょっと、ちがう…」

ピョンは、ちょっぴり、ドキドキしてしまいました。見たことのない生き物は、なんだか、こわいような気もして、遠くから、じーっと眺めているだけでした。スイスイは、ピョンに気づいているのかな?ピョンは、もっと近くで見てみたいけれど、足が、ぴょん、と前に出ません。

「あら、ピョン。どうしたのかしら?」

優しい声がしました。見ると、湖のほとりの、一番大きな木の陰から、モコモコおばあさんが出てきました。白い毛が、まるで雲みたいにふわふわです。「こんにちは、モコモコおばあさん!」「こんにちは、ピョン。」

モコモコおばあさんは、ピョンがじっと見つめているスイスイの方へ、ゆっくりと歩いてきました。「あら、あの子は、スイスイっていうのよ。湖のお友達なんだ。」

「スイスイ…?」「そうよ。湖のなかで、一番速く泳げる、自慢のお友達なのよ。」

モコモコおばあさんは、ニコニコしながら、スイスイのことを教えてくれました。スイスイは、いつも湖をきれいにしていること。ゴミをぜんぶ、ぷくぷく、吸い込んで、きれいにしてくれること。そして、スイスイのキラキラの鱗は、お友達を励ますための、特別な光を放っていること。「みんな、それぞれ、違うところが宝物なのよ。ピョンだって、ぴょんぴょん跳ねる耳が、とっても素敵だもの。」

モコモコおばあさんの、あったかい言葉が、ピョンの心に、じんわりと染み渡りました。「そっか…」「スイスイは、こわくないんだ…」

ピョンは、勇気を、ぎゅっと握りしめました。そして、スイスイに向かって、ぴょん、と一歩踏み出しました。「こ、こんにちは!」

スイスイは、びっくりしたように、一瞬止まりましたが、すぐに、嬉しそうに、ピョンの方へ寄ってきました。「こんにちは!」

キラキラ、キラキラ、スイスイの体が、もっと明るく光ったような気がしました。「わぁ、こんにちは!」「僕、ピョンだよ。」「ピョン、こんにちは!」「スイスイ、とってもきれいだね!」「ありがとう!ピョンの耳も、ぴょんぴょん、かわいいね!」

スイスイは、湖のなかのおもしろいことを、たくさん教えてくれました。水草がゆらゆら、お魚たちが、ひらひら、色とりどりの世界。キラキラの宝物みたいな石がたくさんあること。「今度、ピョンも、湖のなか、見てみる?」「え、いいの?」

ピョンは、スイスイが全然怖くない、とっても優しくて、素敵な友達だとわかりました。ピョンは、スイスイのキラキラの鱗を、じっと見つめました。それは、まるで、たくさんの星が、集まったみたいに、きれいでした。

それから、ピョンとスイスイは、すっかり仲良しになりました。ピョンは、湖のほとりで、スイスイが泳ぐのを眺めたり、スイスイは、ピョンのために、湖底に沈んでいる、キラキラの石を、ぷくぷく、と水面まで運んできてくれたり。

「あらあら、楽しそうだね。」

モコモコおばあさんは、そんな二人の様子を、ニコニコ、ニコニコ、優しく見守っています。春のキラキラ湖は、ピョンとスイスイの、楽しそうな笑い声で、もっともっと、素敵な場所になりました。

ピョンは、キラキラの湖を眺めながら、心から思いました。「世界は、本当に、すばらしい場所だなぁ。」

ふわふわの雲が、空を、ゆっくりと流れていきます。ピョンは、あったかい気持ちで、目を細めました。もう、こわいものなんて、何もありません。みんな、みんな、違って、みんな、みんな、宝物なんだ。ピョンは、キラキラの希望の光を、胸にいっぱい浴びながら、そっと、目を閉じました。すやすや、すやすや。世界は、きっと大丈夫。ぐっすり、眠れそうです。

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