激走! 幻の秘宝『スターライト・ショコラ』を探せ!

「うおおおおっ! 来たぜ来たぜ来たぜぇぇっ!!」

真夏の太陽よりも熱い叫び声が、駄菓子屋の軒先をビリビリと震わせた。

俺、ダイキは右手に握りしめた『銀色の包み紙』を、これでもかと空に掲げる。鼻の頭の絆創膏が、汗でずり落ちそうになるのもお構いなしだ。

「どうしたんだい、ダイキ君! そんな大声を出して」

リュックサックを背負った相棒のマナブが、分厚い眼鏡をクイッと上げながら駆け寄ってくる。

「見ろよマナブ! さっきのクジで当てたこの銀紙、ただのゴミじゃねえ! 太陽にかざしてみろ!」

言われた通りにマナブが銀紙を覗き込む。瞬間、ギラッ! と強烈な反射光が走り、銀色の表面に不思議な線が浮かび上がった。

「こ、これは……地図!? しかも、この形は町外れの……」

「そう! 『おばけ煙突』だ! 伝説の秘宝『スターライト・ショコラ』は実在したんだよ! へへっ、面白くなってきやがった!」

俺は愛車のマウンテンバイクに飛び乗ると、ペダルを思い切り踏み込んだ。

「ダッシュだ、マナブ! 一番乗りは俺たちだぜ!」

「ちょ、ちょっと待ってよダイキ君! 計算によると、あそこへ行くには準備が……うわぁっ!」

キキキーッ! タイヤがアスファルトを削る音を残し、俺たちは風になった。

***

町外れの土手。赤茶けた巨大な『おばけ煙突』が、ドオォォンとそびえ立っている。

「ハァ、ハァ……本当にここにあるのかい?」

息を切らすマナブを他所に、俺は煙突の根本にある怪しげな鉄板を見つけていた。落ちていた太い枝を隙間にねじ込む。

「開け、ゴマ……じゃねえ! 開け、冒険の扉ァッ!」

ガガッ! ギギギギッ!

全身の筋肉をバネにして押し込むと、ドカン! という重い音と共に鉄板が外れた。ぽっかりと口を開けた暗闇。そこから漂ってきたのは、カビ臭い空気じゃなくて……。

「くんくん……甘い? これ、カカオの香りだ!」

「地下にチョコレート工場? いや、廃墟のはずだぞ……」

マナブが懐中電灯を取り出し、スイッチを入れる。ピカッ! 闇を切り裂いた光が照らし出したのは、とんでもない光景だった。

壁も、床も、天井も。すべてが茶色く、艶やかに光っている。

「すげえ! 全部チョコでできてやがる! ここが迷宮の入り口だ!」

俺たちは迷わず暗闇へと飛び込んだ。タッタッタッ! 足音が甘い回廊に響き渡る。

だが、冒険にピンチは付き物だ。

「うわっ!?」

先頭を走っていた俺の足が、急に重くなった。見れば、床がドロドロのピンク色の液体に変わっている。

「ネバネバの水飴トラップだ! 足が取られる!」

「ダイキ君、無理に動いちゃダメだ! 摩擦係数が増して余計に……ヒッ!?」

マナブが言葉を失い、奥を指差す。

ズシン……ズシン……。

腹に響くような地響きと共に現れたのは、全身がビスケットでできた巨大な怪物だった。

「『ゴーレム・ビスケット』だ! あいつ、俺たちの甘い匂いに反応して追ってきてるぞ!」

「逃げ道はない……計算上の生存確率は限りなくゼロに近い!」

青ざめるマナブ。だが、俺の心臓は恐怖じゃなく、興奮でドクンドクンと早鐘を打っていた。

「へへっ、絶体絶命ってやつか? 燃えてくるじゃねえか!」

俺はポケットを探り、とっておきのアイテムを取り出した。真っ赤な包装紙のガムだ。

「甘いのはもう飽き飽きだろ! こいつを食らいな!」

俺は渾身の力でガムを放り投げた。ポイッ!

ガムは美しい放物線を描き、ゴーレムの大きく開いた口の中へスポッ!

直後。

『グオオオオオッ!?』

ゴーレムが顔を真っ赤にして悶絶した。そりゃそうだ、そいつは激辛カプセル入りの罰ゲーム用ガムだからな!

「今だマナブ! あいつの股下がガラ空きだぜ!」

「了解! スライディングだ!」

ズサーーーッ!!

俺たちは動きの止まったゴーレムの下を滑り抜け、迷宮の最深部へと躍り出た。

そこには、ダイヤモンドのようにキラキラと輝く、手のひらサイズの宝石チョコが鎮座していた。

「あった……! 幻の秘宝、『スターライト・ショコラ』だ!!」

***

ガラガラガラッ!

崩れ落ちる迷宮から間一髪で脱出した俺たちは、夕焼けに染まる土手に大の字で転がっていた。

手の中には、苦労して手に入れた秘宝。

「さあ、勝利の味といこうぜ!」

パキッ。

二人で半分こにして口に放り込む。瞬間、口の中でパチパチと星が弾けるような衝撃が走った。

「う、うめぇぇぇ! 力が湧いてくるぜ!」

「ああ、最高の味だね! 疲れが一瞬で吹き飛んだよ!」

顔を見合わせて笑い合う俺とマナブ。だが、冒険はこれで終わりじゃなかった。

ふと、チョコを包んでいた銀紙の裏を見ると、新しい文字が浮かび上がっていたのだ。

『第一の試練クリア。おめでとう。次は南の海、海底洞窟へ向かえ』

俺とマナブは、同時に立ち上がった。

「海底洞窟だってよ! 酸素ボンベが必要だな!」

「へへっ、休んでる暇はねえみたいだな! 行くぞマナブ、次の冒険が俺たちを呼んでるぜ!」

俺たちの瞳は、夕日よりも赤く燃え、まだ見ぬ海の色を映してキラキラと輝いていた。

冒険は、まだまだ終わらない!!

この記事をシェアする
このサイトについて