真夜中コンビニの秘密と、ドクロ裁判官の試練!
「急げ、ポンちゃん! 2時になっちまうぞ!」
「待ってよぉ〜、脇腹が痛いよぉ〜!」
真夜中の住宅街。俺、カケルの怒号と、相棒ポンちゃんの情けない声が響き渡る。俺たちの足音だけが、タッタッタッとアスファルトを叩くビートを刻んでいた。
目指すは都市伝説、『コンビニ・トワイライト』!
午前2時にだけ現れ、そこには食べると無敵になれる伝説のアイテム『勇気マン』が売っているらしい。テストも怖い犬もへっちゃらになる最強アイテムだ。俺はどうしてもそれが欲しい!
「あと1分だ!」
俺は赤いキャップを目深にかぶり直し、ラストスパートをかける。ダッシュ! ダッシュ! 路地裏の突き当たり、何もないはずの空間が、ボウッと紫色の光を放ち始めた。
「あ、あっただべ!」
ポンちゃんが指差す先、ボロボロの看板が点滅している。『コンビニ・トワイライト』。本当にあったんだ!
俺たちが店の前に滑り込んだ瞬間、時計がカチリと2時を指した。
ウィィィィン……
自動ドアが開く。その瞬間、冷蔵庫の中みたいな真っ白な冷気が、ブワァァッと吹き出してきた!
「さ、寒っ!」
「いらっしゃいませぇ〜……」
どこからともなく、やる気のない声が響く。でも、レジには誰もいない。 俺はおそるおそる店内へ足を踏み入れた。
「な、なんか変だぞ、ここ」
商品棚に並んでいるのは、ポテチやチョコじゃない。 『昨日の後悔(塩味)』、『明日の不安(激辛)』、『失恋キャンディ』……。
「ひぃぃ! なんだべこれ、気持ち悪いよぉ!」
ポンちゃんがガタガタ震えながら俺の背中に隠れる。と、その鼻がピクピクと動いた。
「で、でも……店の奥から、すっごくいい匂いがするだべ! これが『勇気マン』の匂いだ!」
ポンちゃんの指差す先には、重厚な鉄の扉。 そこには赤文字で、デカデカとこう書かれていた。
『納骨堂』
「の、納骨堂ぉ!?」
「ビビるなポンちゃん! 行くぞ!」
俺は考えるより先に、その扉を蹴り開けた! バァァァン!
その向こうに広がっていたのは、小さな倉庫なんかじゃなかった。地下へと続く、とてつもなく巨大な吹き抜け空間だ!
壁一面に並ぶ棚、棚、棚! そこにあるのは骨壷じゃない。誰かが捨ててしまった『夢の残骸』だ。折れたバット、破れたスケッチブック、埃をかぶったトゥシューズ……。
「すげぇ……」
俺たちが呆気にとられていると、地底から**ゴゴゴゴゴ……**と地響きが鳴り響いた!
「不法侵入者あり! レジ応援願います!」
ズズズズ……と闇の中からせり上がってきたのは、コンビニの制服を無理やり着込んだ、身の丈10メートルはある巨大なガイコツだ!
「ひぃぃぃ! で、出たぁぁ!」
「我輩はドクロ裁判官! 貴様らの勇気、賞味期限切れか否か、バーコードを読み取ってやる!」
ドクロ裁判官が、手にした巨大な木槌を振りかぶる。
「判決を下す!」
ドガァァァン!!
木槌が通路を叩き潰す! 破片がバラバラと飛び散る!
「うわっと!」
俺は横っ飛びでかわした。その時、天井近くの棚に、黄金に輝く肉まんのようなものが見えた。
「あれだ! あれが『勇気マン』だ!」
俺は崩れかけた足場を蹴って、空高くジャンプした! ビュンッ! あと少し! あと数センチで手が届く! これで俺は無敵になれる!
「カ、カケルぅぅぅ! 助けてぇぇ!」
その時、悲鳴が聞こえた。 下を見ると、崩れた通路の端っこに、ポンちゃんが片手でぶら下がっている! その下は底なしの闇だ。
「へへっ、どちらを選ぶ? 最強の力か、弱虫な友か!」
ドクロ裁判官がニヤリと笑い、ポンちゃんに向かって木槌を構えた。
俺の手は、もう『勇気マン』に触れている。これを取れば、俺は最強だ。でも、ポンちゃんは……。
(考えるな! 動け!)
「そんなもん、いらねぇぇぇ!!」
俺は掴みかけた『勇気マン』を、思いっきり蹴っ飛ばした! バキィッ! その反動を使って、空中で体をひねり、真っ逆さまに急降下!
「ポンちゃん!」
俺は落下しながら、ポンちゃんの手をガシッと掴んだ!
「え!? カケル!?」
「離すなよ!」
俺たちはそのまま、かろうじて残っていた足場へと転がり込んだ。ズザザザッ! 黄金の『勇気マン』は、そのまま闇の底へと落ちていき、見えなくなった。
「あぁ……無敵の力が……」
ポンちゃんが申し訳なさそうに言う。でも、俺は笑って立ち上がった。
「へへっ、いいってことよ。お前がいなきゃ、無敵になってもつまんねーからな!」
すると突然、ドクロ裁判官が高らかに叫んだ。
「無罪(クリア)!!」
パァァァン! どこからともなくクラッカーが鳴り響く!
「見事だ少年! 伝説の『勇気マン』とは、食べる物ではない! 友のために大事な物を捨てられる、その『心意気』のことだ!」
ドクロ裁判官は満足げに頷くと、懐からホカホカの肉まんを二つ取り出した。
「これは真のご褒美だ。とびきり美味いぞ!」
「わーい! ありがとうだべ!」
俺たちが肉まんを受け取った瞬間、視界が真っ白な光に包まれた。
キラーン!
気がつくと、俺たちは朝の公園のベンチに座っていた。 チュンチュンとスズメが鳴いている。朝日が眩しい。
「ゆ、夢……?」
「いや、夢じゃねぇ!」
俺の手には、あのホカホカの肉まんが握られている。 二人で顔を見合わせ、ガブリと肉まんを頬張った。肉汁がジュワ〜ッと溢れ出す。最高に美味い!
「ん? なんか入ってる?」
俺は口の中から、一枚の硬い紙切れを取り出した。 そこには、見たこともない地図と、踊るような文字が書かれていた。
『次は、空飛ぶ図書館で待つ』
「……!」
俺の胸が、ドクンと高鳴った。 空飛ぶ図書館!? なんだそれ、めちゃくちゃ面白そうじゃねーか!
「へへっ、ポンちゃん! 休んでる暇はねぇぞ!」
「えぇ〜!? また走るのぉ〜!?」
「当たり前だろ! 次の冒険が、俺たちを呼んでるんだからな!」
俺は地図を握りしめ、太陽に向かって拳を突き上げた。 俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだぜ!!