激走!令和のミラクルタワー〜記念日のタイムカプセル奪還作戦〜
ドンドン! ピーヒャララ!
腹の底にズシンと響く太鼓の連打。夜空を焦がすような提灯の赤。今日は街の開拓記念日、年に一度の大祭りだ! 人々の熱気でムンムンする通りを、俺、カケルは全力疾走で駆け抜けていた。
「急げマナブ! 乗り遅れるぞ!」 「ちょ、ちょっと待ってよカケルくん! そんなに飛ばしたら、僕の心拍数が……ハァ、ハァ!」
後ろから泣きそうな声が聞こえるが、止まっている暇なんてない。俺たちの目的地は、屋台の焼きそばなんかじゃないからだ。 目指すは街外れの建設予定地。普段は「立ち入り禁止」の看板とフェンスに阻まれた、何もない空き地のはずだった。
ガシャンッ!
俺は勢いをつけてフェンスを蹴り、軽やかに向こう側へ着地する。遅れて、マナブがよじ登り、ドサッと尻もちをついた。
「い、痛た……。でもカケルくん、本当にあったんだね」 「だろ!? 俺の目はごまかせないぜ! 見ろよマナブ、あのピカピカ!」
俺がビシッと指差した先。 昨日までは影も形もなかった場所に、七色にギラギラと輝く巨大な塔が、ドーンとそびえ立っていたんだ!
「すっげぇ……! 天まで届きそうじゃんか!」 「信じられない……。これ、ホログラムじゃないよ。物質として存在してる」
マナブが慌ててリュックからタブレットを取り出す。画面を指で弾いた瞬間、スピーカーからビリビリと激しいノイズが走った。
「うわっ! すっげぇエネルギー反応だ……! カケルくん、この塔、ただの建物じゃないよ。空間そのものが歪んでる!」 「面白くなってきやがった!」
俺たちが塔の足元に近づくと、巨大な入り口のアーチに、ネオンサインのような文字が浮かび上がった。 『時空を超えろ! お祭りダンジョン』
ゴゴゴゴゴ……!
重低音とともに、巨大な扉がゆっくりと開き始める。奥からは、ひんやりとした風と、得体の知れないワクワクする匂いが漂ってきた。
「招待状だぜ、マナブ!」 「えっ、ちょっと、まずは偵察を……」 「考えるより先に動く! それが冒険の鉄則だろ!」
俺はニカっと笑うと、止める間もなく暗闇の中へ猛ダッシュを決めた!
「あっ、もう! 待ってよぉ!」
タタタッ!
塔の中に飛び込んだ俺たちを待っていたのは、まるで未来のゲームセンターみたいな空間だった。 床も壁も、デジタルな光のラインが走っている。
ビュン! ビュン!
「うおっと!」
いきなり前方から赤いレーザー光線が迫る! 俺は反射的に体を低くし、地面スレスレをズザザーッとスライディングで滑り抜けた。
「危ないカケルくん! 次は床が動くよ! 右だ!」 「おうよ!」
マナブの叫び声に合わせて、俺は右側の足場へジャンプ! ガション! と音を立てて、さっきまでいた床が壁に吸い込まれていく。
「ナイスナビゲート、マナブ!」 「計算通りだよ! でも、前方から高エネルギー反応! 来るよ!」
ドッカン! バッカン!
空間にピクセルが集まり、巨大なデジタル怪獣が姿を現した! ブロックでできたティラノサウルスみたいだ。
「ギャオオオオン!」 「でっけぇ! でも、動きがトロいぜ!」
俺は壁を蹴って三角飛び! 怪獣の頭上をヒョイと飛び越える。
「そこだ! 尻尾の下にあるスイッチを押して!」 「任せろ!」
バチンッ!
俺がスイッチを叩くと、怪獣はバラバラと崩れて光の粒子になった。
「やった! 最上階へのエレベーターが開いたよ!」 「急げ! 一気に駆け上がるぞ!」
ドカァーン!
背後で派手な爆発音が響く中、俺たちはギリギリでエレベーターに飛び乗った。 ギュイーン! とものすごいGがかかり、体が一気に持ち上げられる。
チン!
扉が開くと、そこは星空が丸見えの最上階だった。 祭りの喧騒が遥か下から聞こえてくる。 その真ん中に、ポツンと置かれた古ぼけたブリキの箱があった。
「これ……タイムカプセル?」
マナブが恐る恐る近づく。
「分かったよカケルくん。この塔は、街の人々の『お祭りを楽しむワクワクした気持ち』がエネルギーになって、過去の思い出を実体化させたんだ。この箱は、その核(コア)なんだよ!」
その時だ。
ジリリリリリリ!!
耳をつんざくようなアラームが鳴り響いた。
「『イベント終了時刻です』だって!? やべぇ、塔が消えるぞ!」
ガラガラガラ!
足元の床が透け始め、建物全体が光の粒になって空気に溶け出していく。
「うわあぁ! 落ちるぅ!」 「マナブ、その箱を離すなよ!」 「えっ!? どうする気!?」 「決まってんだろ! 飛ぶんだよ!」
俺はマナブの腕をガッチリ掴むと、崩れゆく床を蹴って、夜空へ向かって決死の大ジャンプ!
「うおおおおおお!」 「ひええええええ!」
ヒュオオオオ……!
風を切って落下する俺たち。眼下には、祭りの灯りがキラキラと輝いている。
ズドン! ドサッ!
「いってぇ……」
草むらに転がった俺たちは、泥だらけになりながら体を起こした。 見上げると、あの巨大な塔はシュンと音もなく消え失せ、元の静かな空き地に戻っていた。
「ははっ、生きてるか? マナブ」 「も、もうダメかと思ったよ……」
マナブの手には、無事なブリキの箱が握られている。 錆びついた蓋を開けると、中にはメンコやビー玉、それに最近流行りのカードゲームまで。 昭和、平成、令和……いつの時代も変わらない、子供たちの宝物がギッシリ詰まっていた。
「へへ、マナブのナビのおかげで助かったぜ。やっぱ俺たち、最強のコンビだな!」 「……もう、本当に無茶苦茶なんだから。でも、僕の計算以上の結果が出せたね」
マナブが誇らしげに笑い、俺たちは拳をコツンと合わせる。 これで一件落着……と思いきや。
「ん? なんだこれ?」
俺は箱の底から、一枚のボロボロの地図を見つけ出した。 月明かりに照らして、文字を読み上げる。
「おいマナブ、見ろよこれ! 『地底魔人の秘宝』……それに『太陽の石を探せ』って書いてあるぞ!」 「ええっ、ウソでしょ!? まだ続くの!?」
マナブが目を丸くして叫ぶ。 俺はニヤリと笑って、地図を夜空に掲げた。
「決まりだな! 次の休みは地底探検だ!」
僕らの冒険は、まだ始まったばかりだ!!