星屑ショッピングモールと最後の銀河土産
「よっしゃー!ついに来たぜ、星屑ショッピングモール!」
ポポは、念願の宇宙旅行の最終目的地に到着し、両手を突き上げて叫んだ。ここでお土産を買って、愛するアリアに最高のプレゼントを渡すんだ!モールは、無数の星屑が降り注ぐかのようなキラキラとした光に包まれ、様々な種族の宇宙人たちが賑わっている。巨大な触手を揺らすエイリアン、全身を毛で覆われた毛玉のような生物、さらには液体状になってガラス瓶の中を漂う生命体まで。ポポは、そんな賑わいを横目に、お土産物屋の棚を物色し始めた。
「おお、これは面白そうだぞ!宇宙最新型ドローン!アリア、これで星空を一緒に眺めようって言ってたんだ!」
ポポは、手のひらサイズの銀色のドローンを手に取り、カゴに放り込む。次に目に留まったのは、渦を巻くブラックホールを模したアロマディフューザー。「これなら、アリアの部屋も宇宙の香りでいっぱいになるな!」と、さらにカゴに投入。
「おや、これは!光る宇宙クラゲキーホルダー!アリア、クラゲ大好きだったよな!」
ポポが嬉しそうにキーホルダーを掲げると、隣で品定めをしていた、クリスタルのような肌を持つ宇宙人が声をかけてきた。
「おや、それはアリア星の珍品では?なかなか見かけない代物だ。だが、アリア星ではもう絶滅寸前らしいぜ!」
「へえ、そうなんだ!アリアにぴったりじゃん!」
ポポは、その言葉にさらにテンションが上がり、キーホルダーを大事そうにカゴに入れた。ふと、店の奥から、痩せた老人が現れた。
「宇宙旅行は、もうすぐ終わりじゃよ」
店主らしきその老人は、ポポにそう告げた。しかし、ポポはそれを「旅の終わりは寂しいけど、ここでお土産を買えば、アリアといつまでも繋がっていられる!」という、ロマンチックな意味だと勘違いし、元気に応じた。
「まだまだ買い足しますよ!アリアに最高の『別れのプレゼント』を、ね!」
ポポは、店主の言葉を全く意に介さず、さらにショッピングに熱中した。
「おお、これは!魔法の星屑キャンディ!キラキラしてて、アリアも絶対好きになる!」
ポポがキャンディをカゴに入れると、店主がふと、それに触れた。
「ほう、これは良い品を選んだ。だが、そのキャンディは、このモールでしか手に入らない、特別な『別れの魔法』がかかっておるからのう。地球に持ち帰っても、すぐに溶けてしまうかもしれん」
「え、溶けちゃうの?それって、アリアと会えなくなっちゃうってこと?」
ポポは一瞬不安になったが、店主の次の言葉に、都合よく解釈を変えた。
「いやいや、心配いらん。一度きりの旅の、最後の思い出を繋ぎ止めるためののう。遠距離恋愛を応援する魔法のようなものじゃよ。アリアもきっと喜ぶぞ」
「へー、ロマンチックじゃん!遠距離恋愛を応援してくれるのか!それなら、もっと買っちゃおう!」
ポポは、その言葉を「別れ」ではなく「応援」だと都合よく解釈し、「宇宙一甘い星屑キャンディ」をさらに数袋、カゴに追加した。店主は、そんなポポの様子を、静かに、そしてどこか寂しそうに見つめていた。
アリアが以前、「いつか、あの星雲の写真を撮って送ってね」と話していたのを思い出したポポは、モールの一番奥にある「銀河展望台」へ向かった。そこでは、宇宙旅行の記念として、特別な「宇宙旅行証明書」が発行されていた。
「これだ!アリアに、僕との旅の思い出を形にして贈りたい!」
ポポは、一番星の形をした、キラキラと光る証明書を選んだ。店主が、ポポにそっと声をかける。
「その証明書は、特別な意味を持つ。よく見てごらん。君がアリアと過ごした、かけがえのない『日常』が、そこに刻まれておるからのう」
ポポは、店主の言葉に導かれるように、証明書をじっと見つめた。そして、そこに書かれていた文字を読んだ瞬間、ポポの顔から笑顔が消え失せた。
「宇宙旅行は、一度きり。この証明書は、出発の証であり、帰還の証でもあります。そして、この証明書に刻まれた星は、あなたの愛する人の心に、永遠に輝き続けます。…ただし、この旅は、二度と戻れない、一方通行の旅です。」
「一方通行…?え、嘘だろ…?アリアに会えなくなるってことか?アリアとの、あの、雨の日に一緒に傘に入った思い出も、初めて手をつないだあの公園のベンチも、全部、もう…?」
ポポは、店主の言葉と証明書の意味が繋がったことに気づき、全身から力が抜けていくのを感じた。証明書を何度も見返し、店主に詰め寄ろうとしたが、店主はただ静かに頷くだけだった。それまで軽快だったポポの態度は、一瞬で崩壊した。彼は、証明書を握りしめたまま、その場で膝から崩れ落ちた。
宇宙旅行は、本当に最後。そして、このモールで売られている「魔法の品々」は、別れる者同士が、互いを想い、記憶を繋ぎ止めるための、最後の贈り物だったのだ。アリアに会えるのは、もう二度とない。ポポは、信じられないという表情で、ただ立ち尽くすしかなかった。
ポポは、涙をこらえきれず、星屑ショッピングモールを後にした。手に持っていたのは、アリアのために選んだ、銀河の星が刻まれた「宇宙旅行証明書」と、もう溶け始めている「魔法の星屑キャンディ」。モールを出ると、そこにはもう、賑やかな宇宙人たちの姿はない。静寂だけが広がる。ポポは、アリアとの楽しかった日々、特に「アリアが風邪をひいた時、看病してあげたのに、逆に心配されて、熱を出しちゃったんだ。あの時、アリアが僕の額に冷たいタオルを当ててくれた手の感触が忘れられない」という、些細だが愛おしい思い出を思い出し、泣きながらも、証明書を強く握りしめた。
「アリア…ありがとう。この星、ずっと、ずっと、僕の心の中で輝いてるよ。」
ポポの涙は、宇宙の暗闇に吸い込まれていく。それは、悲しい別れではあったが、同時に、アリアへの変わらぬ愛と、共に過ごした時間の輝きを、永遠に心に刻む、感動的な旅の終わりだった。