爆裂!日曜日のリビング・ウォーズ

バリボリ、バリボリ!

小気味よい音が、日曜日のリビングに響き渡る。 俺、カケルと相棒のマモルは、ソファに深く沈み込んでいた。目の前のテレビでは、アニメ『銀河拳闘士』がクライマックスを迎えている。

「いけっ! そこだ!」 「ふふ、甘いなカケル。今のフェイントは次の右ストレートへの布石だ」

マモルがメガネをキラリと光らせながら解説する。俺たちはポテトチップスの袋を奪い合いながら、最高にダラダラとした時間を過ごしていた。 窓の外は快晴。絶好の行楽日和? 知ったことか! このリビングこそが、俺たち『地球防衛軍・秘密基地オメガ』なのだ。平和ボケした午後の空気、炭酸の抜けたコーラ。これぞ至福!

だが、その平和は唐突に破られた。

バチバチバチッ!!

「うおっ!?」

テレビ画面が、ありえない色で発光した。紫、緑、そして禍々しい黒! 画面のノイズが渦を巻き、そこから「ヌオッ」と巨大な腕が飛び出してきたのだ!

「マ、マジかよ!?」 「次元の壁が……崩壊した!?」

ドスゥゥゥン!!

リビングのフローリングが悲鳴を上げた。 ミシミシと軋む床。舞い上がる埃。 俺たちの目の前に仁王立ちしていたのは、たった今テレビの中にいたはずの最強の悪役、魔王ギガロスだった。

「ガハハハ! ここが三次元の世界か! 狭い! 脆い!」

ギガロスが腕を振るうだけで、風圧が巻き起こる。壁に掛けたカレンダーがバタバタと暴れ、カーテンが引き裂かれた。

「この世界の家具は脆いな! 全て破壊してやる!」

バキィッ!!

ギガロスの蹴りが、俺たちの愛用していたコーヒーテーブルを粉砕した。 飛び散る木片。散らばるポテトチップス。 俺の中で、何かがプツンと切れる音がした。

「て、てめえ……! 俺たちの聖域(リビング)で、好き勝手やってんじゃねえぞ!」

俺は跳ね起きた。 考えるより先に体が動く。俺は部屋の隅に立てかけてあった『最終兵器』をひっつかんだ。 コードをコンセントに突き刺し、スイッチオン!

ウィイイイイイン!!

猛烈な唸りを上げるその機械。そう、掃除機だ! だが今の俺には、これが伝説の聖剣『エクスカリバー』に見えている!

「うおおお! 燃えてきたぜ! 俺の掃除機エクスカリバーが火を噴くぞ!」

「カケル、無策で突っ込むな!」

マモルが叫びながら、ソファの陰へ華麗なスライディングを決める。 彼は懐から黒い棒状のデバイス――テレビのリモコンを取り出した。

「敵の戦力分析を開始する……! データリンク、承認!」

マモルがリモコンのボタンを高速で叩く。ピピピピッと電子音が鳴り響く。 実際には音量が変わったりチャンネルが変わったりしているだけかもしれないが、今のマモルにとっては、敵の弱点を解析するスーパーコンピューターなのだ!

「グオオオ! なんだその五月蠅い音は!」

ギガロスがマモルに狙いを定めた。丸太のような腕が振り上げられる。

「マモルッ!」

俺はエクスカリバー(掃除機)のノズルをギガロスに向けた。

「こっちだデカブツ! この部屋の塵一つ残さず吸い込んでやる!」

俺は掃除機を振り回し、ギガロスの足元へ特攻した。ヘッド部分で足の小指をガンガンと攻撃する。

「ぬおっ!? 地味に痛い! 貴様ァ!」

ギガロスが体勢を崩した。その隙を見逃すマモルじゃない。

「データ解析完了! カケル、勝率は……99パーセントだ! 今だ、必殺・逆再生光線!」

マモルがリモコンを掲げ、『巻き戻し』ボタンを連打した。

「らじゃーっ! いけええええ!」

俺は掃除機のパワーを『強』……いや、『MAX』に叩き込んだ! モーターが限界を超えて悲鳴を上げる。排気口から熱風が吹き荒れる!

「くらえええ! サイクロン・バスター!!」

ゴオオオオオオッ!!

凄まじい吸引力が生まれた。 マモルの『逆再生』のイメージと、俺の『吸引』のイメージが重なり、奇跡が起きる。

「グオオオ!? 体が……戻るううう! 時間が、逆流しているだとォォ!?」

ギガロスの巨体が、ズズズッとテレビの方へ引き寄せられていく。

「離せ! 貴様ら、何者だ!」 「俺たちは、ただの日曜日の小学生だ!」

俺とマモルは声を揃えて叫んだ。

「うおおおおお!」 「戻れええええ!」

ズボボボボッ!

ギガロスの足が、腰が、そして頭が、テレビ画面の中へと飲み込まれていく。

「おのれえええ! 覚えておけえええ!」

シュポン!

最後はコルクを抜いたような間抜けな音と共に、ギガロスは完全に画面の向こうへと消え去った。 プスン……。 テレビの電源が落ち、静寂が戻る。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

俺たちは床に大の字になった。 部屋はグチャグチャだ。テーブルは割れ、お菓子は散乱し、カーテンは破れている。 母ちゃんに見つかったら、ギガロス以上に恐ろしい雷が落ちるだろう。

でも。

「やったな、カケル」 「おう、やったぜマモル」

俺たちは顔を見合わせ、ニカッと笑った。

「イエーイ!」

バチン!

高く掲げた手と手が重なり、最高のハイタッチが響いた。 世界の平和は守られた。俺たちの手によって!

勝利の余韻に浸ろうとした、その時だ。

ブォン!

台所の方から、重低音が響いた。 見ると、電子レンジが怪しく明滅しているではないか。 中のターンテーブルが、何も入っていないのにグルグルと回り出し、冷気が漏れ出している。

「……おいカケル。あの反応は」

マモルがメガネの位置を直し、不敵に笑う。

「次は『冷凍怪獣チン』のお出ましだぜ? どうやら、休憩してる暇はないらしい」

俺はエクスカリバーを握り直した。 体の奥底から、また新しい力が湧いてくるのがわかる。

「上等だ! 解凍してやるぜ!」

退屈な休日? そんなもの、俺たちの辞書にはない。 冒険はいつだって、家のドアを開ける前から始まっているんだ!

「行くぞマモル!」 「了解だ、カケル!」

俺たちは新たな戦場(キッチン)へと向かって、全速力でダッシュした!

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